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歯医者が苦手なあなたへ|草加で“痛みに配慮”した診療を受けるには

「麻酔が痛かった」「何をされるのか分からないのが怖い」「過去のつらい経験が忘れられない」。
歯科を遠ざける理由の多くは、“痛みそのもの”よりも“痛みへの不安”と“自分でコントロールできない感覚”にあります。私は診療のたび、処置の巧拙と同じくらい、痛みの予防・軽減と不安の和らげ方に注意を払っています。今日は、院長の立場から「痛みに配慮した診療」をどのように実践しているか、受診される側が何を伝え、どう準備すると良いかを、できる限り分かりやすく書きます。

 

目次

 

私が考える「痛みに配慮した診療」とは

“痛くない歯医者”という表現は簡単ですが、現実には刺激がゼロの処置は存在しません。大切なのは、①痛みの原因を事前に減らす、②感じ方を左右する要素(不安・緊張)を整える、③刺激を最小限に分割し、④患者さんがいつでも止められる状態を確保する――この四つです。
技術(麻酔・器具操作)に加え、コミュニケーションと段取りが痛みの記憶を書き換えます。

 

痛みが生まれる仕組み――刺激・炎症・脳の“予測”

痛みは、局所の刺激だけで決まりません。
むし歯や歯周炎で組織が炎症を起こすと、神経が過敏化し、弱い刺激でも強く感じます。加えて、人の脳は過去の経験から予測を立てます。「きっと痛い」という予測は、同じ刺激でも痛みを増幅します。だからこそ、局所の炎症を先に鎮める工夫と、処置前の情報共有(見通しの提示)が、麻酔や処置の体感を大きく変えます。

 

麻酔を痛くしないための工夫(術前・刺入・注入)

麻酔は“打ち方”で体験が変わります。私が徹底しているのは次の順序です。

術前
粘膜を乾燥させ、表面麻酔を十分に効かせます。薬液は体温程度に温め、pHの影響で滲みが出やすい場合は緩衝(バッファリング)を検討します。処置部位の炎症が強ければ、先に清掃や応急処置で刺激閾値を下げます。

刺入
最細径の針を選択し、粘膜を軽く牽引して張りを作り、痛覚の少ない部位から角度を一定に。刺入の直前に注意をそらす声かけを行い、患者さんの呼吸のリズムに合わせます。

注入
電動注射器や手技で極めてゆっくり注入します。必要量を分割し、痛みがゼロでないことを前提に、合図があれば即停止。浸潤か伝達かは部位と炎症の程度で選び、少量多点で圧を分散させます。

 

炎症が強い歯のときの痛みコントロール

急性炎症では麻酔が効きにくいことがあります。そうした場合は、無理に本処置へ進まず、まずは感染源の減圧(咬合の調整や仮開放)、鎮痛の計画、患部の安静化を優先します。根管治療ではラバーダムで防湿し、薬液刺激を避けながら段階的に進めます。焦らず、痛みが抑えられる条件を整えてからが原則です。

 

苦手意識へのアプローチ――“分かる・選べる・止められる”

痛みの感じ方は、コントロール感に左右されます。私が診療で必ず行うのは次の三点です。

分かる:今日やること/やらないこと、時間配分、途中のチェックポイントを先に共有します。
選べる:処置の選択肢や段取りに患者さんの希望を反映します(短めの回数分割、準備だけの日を設ける、など)。
止められる:手を上げる合図でいつでも中断。再開のタイミングも患者さん側で決められます。

この「分かる・選べる・止められる」は、小児からご高齢まで有効です。必要に応じて、音や光の刺激を減らす配慮(器具音の説明、アイマスク希望の確認)も行います。

 

小児・妊娠中・基礎疾患がある方への配慮

小児にはTell–Show–Do(説明→見せる→少しやってみる)で関わり、成功体験を積み重ねます。妊娠中は時期と体勢に配慮し、急を要さない処置は安定期に。基礎疾患や服薬がある場合は、主治医との連携のうえ、安全域で計画を組みます。どのケースでも“無理をしない”“今日はここまで”の判断が、結果として治療全体の質を高めます。

 

初診からの流れ(評価→説明→同意→試し→処置→振り返り)

初診は、痛みの背景を探る時間です。お口の状態、過去のつらい経験、苦手な音・姿勢、注射の既往、麻酔の効き方などを伺います。検査で現在地を共有し、今日は何をするかを合意してから進めます。
麻酔は“試し打ち”を基本に、感覚を一緒に確認。処置の後は、次回の計画と痛みの予防策(鎮痛のタイミング、食事や清掃の注意)を具体的にお伝えします。

 

受診前にご自宅でできる準備

視認性が必要なポイントだけ、短くまとめます。

睡眠・食事:空腹・寝不足は痛み感受性を上げます。軽く食べ、時間に余裕を。
服装:締め付けの少ない服、体温調整しやすい上着。
伝えてほしいこと:怖かった経験、苦手な音や姿勢、既往歴と服薬、過去に麻酔が効きにくかった部位。
合図の練習:手を上げる合図を事前に打ち合わせしておくと安心です。

 

よくあるご質問への私の答え

Q. 私は麻酔が効きにくいタイプですか?
局所の炎症・解剖学的な差・過去の体験による緊張で効きにくいことはあります。方法(刺入点・伝達麻酔・緩衝・温度)を組み合わせ、“効いてから進む”を徹底します。

Q. 治療後に痛くなりますか?
刺激がゼロではありません。処置内容に応じた予防的な鎮痛と過ごし方を具体的にお伝えします。痛みが想定を超える場合は、我慢せずに連絡してください。

Q. 途中で止められますか?
はい。止める権利は患者さんにあります。合図で必ず中断し、再開もご自身の合図で行います。

 

当院の取り組みとお約束

草加駅東口から徒歩5分のラウレア歯科矯正歯科クリニック草加では、痛みに配慮した診療を手順として標準化しています。表面麻酔の徹底、薬液の温度管理、細径針・電動注射器の活用、段階的な説明と“試し”の導入、合図での即時中断――どれも特別なことではありませんが、毎回欠かさず行うことが体験の質を左右します。
無理な治療の押し付けはいたしません。必要があれば選択肢を並べ、不要であればやらない選択も含めて一緒に決めます。

 

まとめ――「痛みの少ない体験」を積み重ねる

痛みの恐怖は、理屈だけでは消えません。実際に痛くなかった体験を積み重ねることで、少しずつ上書きされていきます。
草加で歯医者が苦手な方へ。私たちは“分かる・選べる・止められる”診療をお約束します。初回は相談だけでも構いません。小さな一歩から、ご自身のペースで進めていきましょう。

 

監修者

ラウレア歯科クリニック 院長 伊藤 洋平

伊藤 洋平 | Yohei Ito

明海大学歯学部卒業後、大学病院での研修を経て、複数の医療法人歯科医院にて臨床経験を積む。2017年に「ラウレア歯科矯正歯科クリニック草加」を開院。地域に密着した“予防重視”の診療を軸に、幅広い世代の患者に寄り添う歯科医療を提供している。

【略歴】

【所属学会】

【資格】

【所属スタディグループ】

【出版・執筆歴】

  • ・平成28(2016)年:デンタルダイヤモンド1月号「他医院で行われたインプラント補綴のリカバリー症例」
  • ・GO会30周年記念誌「埋伏歯をMTMを用いて挺出させた1症例」

【学会発表】

  • 平成26(2014)年:顎咬合学会ポスター発表「セファロ分析 トレースを極める」
  • 平成27(2015)年:顎咬合学会ポスター発表「治療用義歯を用いた上下顎総義歯症例」
  • 平成30(2018)年:第8回ワールドデンタルショー出展セミナー「外傷した上顎前歯部に対しMTMを用いた一症例」

【参加講習会】

  • ・UCLA「インプラント時代におけるピュア・ペリオ」
  • SBC(サージカルベーシックコース)

その他多数

ラウレア歯科矯正歯科クリニック