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子どもの歯並び、いつから気にすべき?草加でできる小児矯正の基礎知識

「乳歯だし、いずれ生えかわるから様子見でいいのでは?」
診療室で、保護者の方から最もよくいただくご相談のひとつです。結論からお伝えすると、子どもの歯並びは“痛みが出てから”ではなく、“成長の節目ごとに評価する”のが望ましいと考えています。なぜなら、小児矯正(Ⅰ期治療)は成長力を上手に利用して「顎の成長方向」や「噛み合わせの誘導」を図る治療であり、適切なタイミングを逃すと本来よりも選択肢が限られたり、後の治療負担が大きくなる可能性があるからです。

本稿では、草加で小児矯正を検討するご家庭に向けて、相談開始の目安、見逃しやすいサイン、治療の進め方、日常でできるサポートまでを臨床の視点で整理します。最終的な治療の要否や方法は個々の診断に基づいて決まりますが、受診の前に「何を見て、どう考えればよいか」をつかんでいただけるはずです。

目次

乳歯から永久歯への移行期に起こること

混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)は、顎骨の前後・幅・高さがダイナミックに変化する時期です。上顎は鼻腔・副鼻腔の発育と関わり、下顎は成長のピークがやや遅れて現れることが多いなど、時期ごとに特徴があります。ここで重要なのは、歯そのものを無理に動かすのではなく、顎の成長余力を適切な方向へ誘導するという発想です。狭い顎は将来的な叢生(デコボコ)につながり、上下の位置関係のズレは受け口・出っ歯・開咬などの起点になり得ます。成長の“窓”が開いているうちに評価し、必要な介入の可否を検討する価値は十分にあります。

いつ受診すべき?相談開始の目安

年齢だけで一律に決めることはできませんが、臨床的な目安として次の二つをお勧めしています。

1つ目は、前歯が生え替わり始める時期(おおむね6〜7歳前後)。上の前歯2本、下の前歯2本が永久歯に生えかわり始める頃は、顎幅の不足や咬合のズレが見つかりやすい時期です。
2つ目は、学校健診や定期検診で指摘を受けたタイミング。指摘の有無にかかわらず、親御さんが「何か違和感がある」と感じたら、評価だけでも受けておくと安心です。

「早ければ早いほど良い」という考え方は誤解を生みます。必要のない時期に装置を入れることは勧めません。重要なのは“適切な時期に、適切な評価を行うこと”であり、その結果「今は経過観察で十分」という判断になることも珍しくありません。

見逃されやすい“歯並び・噛み合わせ”のサイン

日常で気づけるサインは多くありませんが、次のような傾向が見られたら、一度専門的な評価を受ける価値があります。

  • ・ 上下の前歯がすれ違って咬み切れない、前歯が開いている
  • ・ 下顎がやや前に出て見える、横から見ると上顎が引っ込んで見える
  • ・ 奥歯で噛んだとき、上の歯が下の歯を内側からかぶせている(交叉咬合)
  • ・ 乳歯の早期脱落や、反対に「なかなか抜けない」歯がある
  • ・ 食事のときに片側ばかりで噛む、発音が不明瞭と言われる
  • ・ 口が開きがちで口呼吸になっている、いびき・鼻づまりが多い
  • ・ 指しゃぶり・爪噛み・唇噛み・舌で前歯を押す癖が続いている

これらは“将来必ず悪化する”ことを意味するわけではありません。ただ、成長のタイミングで整えられることがあるという示唆にはなります。

小児矯正(Ⅰ期)でできること/できないこと

小児矯正の主目的は、永久歯が並ぶための土台づくりと、噛み合わせの方向付けです。

できることの代表例としては、上顎の幅不足に対する拡大、反対咬合の早期是正、前歯部の軽度の叢生の緩和、機能的な偏位の是正などが挙げられます。これにより、Ⅱ期(本格矯正)での抜歯回避につながる可能性や、治療の難易度・期間の軽減が期待できます。

一方で、Ⅰ期治療だけで“最終的な歯並びの完成”まで到達できるとは限りません。歯根の平行性や細かな配列は、第二大臼歯の萌出以降(中学生以降)にⅡ期治療で微調整が必要になるケースがあります。Ⅰ期で何がどこまで改善できるのかを事前に共有することが重要です。

装置だけでは足りない:癖・呼吸・舌の機能の整え方

装置で歯や顎を誘導しても、舌・唇・頬・呼吸の使い方が不適切なままだと後戻りのリスクが高まります。臨床では、舌突出癖の是正、鼻呼吸への切り替え、嚥下時の舌位の指導など、口腔筋機能療法(MFT)を併用することがあります。とくに口呼吸が強いお子さまでは、耳鼻科的な評価(アデノイド・扁桃肥大、アレルギー性鼻炎など)を同時に検討することもあります。
小児矯正は「装置を入れて終わり」ではなく、生活全体で正しい機能を育てる取り組みが治療の質を左右します。

当院での進め方(初診〜診断〜経過観察〜治療)

草加駅東口から徒歩5分のラウレア歯科矯正歯科クリニック草加では、以下の流れで慎重に判断します。必要のない介入は行わず、タイミングが来るまで経過観察を選ぶこともあります。

  • 初診相談
    現在気になる点、生活習慣、既往歴を伺い、口腔内を確認します。必要があればレントゲンや口腔内スキャンを行います。
  • 精密検査と診断
    顎顔面の成長の方向、歯列の幅・余地、咬合のズレの有無を評価し、Ⅰ期介入の適否と目的を明確化します。
  • 方針共有と選択
    介入が必要な場合は装置の種類、想定される期間、通院間隔、日常の留意点を、経過観察の場合は再評価時期をお伝えします。
  • 治療とメンテナンス
    装置調整に加え、MFTやブラッシング・食習慣のサポートを実施します。治療後は後戻りを抑えるための保定と、定期的なチェックを継続します。
  • Ⅱ期の要否の判断
    永久歯列完成時に、必要があればⅡ期治療に移行します。不要と判断できるケースもあります。

いずれの段階でも、期間・通院負担・起こり得る不快症状(違和感・一時的な痛み・発音の変化など)・清掃性の低下による虫歯・歯肉炎のリスクについて事前にご説明し、同意のうえで進めます。

リスクと限界についての正直な話

小児矯正はメリットばかりではありません。装置の装着時間が守られないと効果が出にくく、口腔衛生の低下は虫歯や歯肉炎の誘因になります。成長予測はあくまで推定であり、想定と異なる成長を示すこともあります。その場合、計画の修正や追加の治療が必要になることがあります。
また、Ⅰ期で十分な改善が得られても、仕上げの段階でⅡ期治療を推奨することがあります。「Ⅰ期だけで必ず完了する」といった断定的な説明は当院では行いません。個々の状態に応じて、最も合理的で負担の少ない道筋を一緒に選びます。

まとめ:迷ったら「評価」を受ける。治療はその先で考える

子どもの歯並びは、“早く始めること”より“適切に評価すること”が大切です。6〜7歳前後はひとつの節目ですが、年齢だけにとらわれず、違和感を覚えた時点で評価を受けておくと、その後の選択肢が広がります。装置による誘導だけでなく、呼吸・舌・嚥下・姿勢といった機能面を整える視点を持つことが、将来の安定につながります。

草加市・草加駅周辺で小児矯正を検討されている方は、まずは現状の把握から始めましょう。治療が不要であれば、不要と率直にお伝えします。必要があれば、その目的とタイミング、通院負担まで含めて、保護者の方と納得のいく計画を立てていきます。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

草加市草加駅東口から徒歩5分の歯医者・歯科
ラウレア歯科矯正歯科クリニック草加
住所:〒340-0016 埼玉県草加市中央2-2-17-2
TEL:048-951-3210

 

監修者

ラウレア歯科クリニック 院長 伊藤 洋平

伊藤 洋平 | Yohei Ito

明海大学歯学部卒業後、大学病院での研修を経て、複数の医療法人歯科医院にて臨床経験を積む。2017年に「ラウレア歯科矯正歯科クリニック草加」を開院。地域に密着した“予防重視”の診療を軸に、幅広い世代の患者に寄り添う歯科医療を提供している。

【略歴】

【所属学会】

【資格】

【所属スタディグループ】

【出版・執筆歴】

  • ・平成28(2016)年:デンタルダイヤモンド1月号「他医院で行われたインプラント補綴のリカバリー症例」
  • ・GO会30周年記念誌「埋伏歯をMTMを用いて挺出させた1症例」

【学会発表】

  • 平成26(2014)年:顎咬合学会ポスター発表「セファロ分析 トレースを極める」
  • 平成27(2015)年:顎咬合学会ポスター発表「治療用義歯を用いた上下顎総義歯症例」
  • 平成30(2018)年:第8回ワールドデンタルショー出展セミナー「外傷した上顎前歯部に対しMTMを用いた一症例」

【参加講習会】

  • ・UCLA「インプラント時代におけるピュア・ペリオ」
  • SBC(サージカルベーシックコース)

その他多数

ラウレア歯科矯正歯科クリニック