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歯ぐきからの出血、放置してない?草加で受ける歯周病チェックと対策

歯みがきのたびに血が混じる。フロスを通すと赤くにじむ。朝、口の中に鉄っぽい味がする。――診療室でこの話題になるたび、私はまず“痛くないから大丈夫”という誤解をほどくところから始めます。歯周病は静かに進む病気で、出血はその初期サインです。痛みが出てからでは治療の自由度が下がります。今日は「なぜ血が出るのか」「いつ受診すべきか」「受診後に何をするのか」を、院長として平易にまとめます。

 

目次

 

出血の正体をまっすぐ見つめる

歯ぐきの出血の多くは、歯と歯ぐきの境目に停滞したプラーク(細菌の塊)に対する炎症です。プラークは時間とともに成熟し、唾液中のミネラルを取り込むと歯石に変わります。特に歯ぐきの中に隠れる縁下歯石は、細菌の温床を“石造りの要塞”にしてしまうため、触れただけでにじむような出血が続きます。
さらに、不適合な詰め物・被せ物の段差、叢生(デコボコ)で清掃が難しい部位、夜間の口呼吸や喫煙などが炎症を助長します。重要なのは、「強く磨いたから血が出る」と決めつけず、原因を特定する評価を先に置くことです。

 

受診の目安――“様子見”が裏目に出る前に

私の基準では、同じ部位からの出血が2週間以上続くなら一度評価をおすすめします。赤み・むずがゆさ、朝のねばつきや口臭、歯が長く見える感覚、食片が詰まりやすくなった変化も見逃したくないサインです。頬の腫れや発熱、噛むと跳ね返るような痛みがある場合は急性症状の可能性があり、その日の受診を検討してください。

 

初診で何をするのか――見える化と優先順位づけ

まずは現状の可視化です。視診に加え、歯周基本検査(ポケットの深さ、出血部位、歯の動き)を行い、必要に応じてレントゲンで骨吸収の有無や程度、根の形態を確認します。プラーク染色で“どこに・どのくらい”磨き残しがあるかを患者さんと一緒に確認し、写真で記録します。ここで原因と広がりが見えれば、治療とホームケアの優先順位が自然に定まります。

 

進行度に応じた進め方――歯肉炎/歯周炎

炎症は「どれだけ深部に及んでいるか」で対応が変わります。私は“必要十分で、過不足のない介入”を原則にしています。

歯肉炎(骨吸収なし)
スケーリングとバイオフィルム除去で環境を整え、歯ブラシの当て方やフロスの通し方を“その人の歯列に合わせて”調整します。多くは数週間で出血が落ち着きます。

軽度〜中等度歯周炎(局所的な骨吸収)
麻酔下でポケット内部の歯石と感染面を丁寧に除去(ルートプレーニング)。噛み合わせの偏った負荷が炎症を悪化させている場合は咬合微調整を行います。薬剤は適応を絞り、必要時のみ併用します。

進行した歯周炎・難治部位
再評価で深いポケットや根分岐部病変が残る場合に限り、歯周外科を検討します。予後が厳しい歯は“全体の保存計画”の観点から率直に説明し、患者さんの希望とすり合わせます。

 

家でできる炎症コントロール

視認性のため、ここだけポイントを短くまとめます。詳細は診療室で実地に調整します。

歯ブラシ:ペン持ちで小刻みに。力ではなく角度と当て方。毛先はふつう〜やわらかめ。
フロス:接触点を越えて歯面に沿わせて上下。毎日1回を目標に。
歯間ブラシ:部位ごとにサイズ合わせ。合わないサイズは外傷・出血の原因。
タイミング:就寝前のケアを最重視。就寝中は唾液が減り炎症が進みやすい。

“道具選び”は処方と同じです。使い方の癖を拝見し、その人仕様に合わせます。

 

出血を長引かせる背景因子への配慮

喫煙(加熱式含む)は歯ぐきの血流を落とし、炎症サインを隠す一方で治りを阻害します。本数が減るだけでも予後は変わります。口呼吸は乾燥でプラークの質を変え炎症を助長しますから、鼻づまりが強い場合は耳鼻科評価も視野に。糖尿病は歯周病と双方向に悪影響を及ぼすため、内科と連携して血糖コントロールを整えると改善が見込めます。抗凝固薬・抗血小板薬など薬剤性の出血傾向が疑われる場合でも、自己判断の中断は禁物です。歯科側で配慮した計画を立てます。

 

再発を抑える通い方――メンテナンスの考え方

炎症が落ち着いても、口腔内は“元に戻ろうとする力”が働きます。再発を抑える鍵は、

日々のホームケアで炎症閾値を下回り続けること、
プロケアでバイオフィルムを定期的にリセットすること。

間隔はリスクで変えます。喫煙・深いポケットの既往があれば1〜3か月、安定していれば3〜6か月を目安に。検査値と写真で経過を一緒に確認し、間隔は柔軟に見直します。

 

当院の方針とお約束

まず評価を先に。出血の“場所・原因・広がり”を明確化し、ゴールと優先順位を共有します。
介入は最小限で本質的に。スケーリング/ルートプレーニングを軸に、必要時のみ外科や薬剤を検討します。
道具と手順はその人仕様に。歯間ブラシのサイズ、フロスの運び、歯ブラシの選択まで実演し、続けられる形に落とし込みます。
良くなった点・課題は再評価で見える化。変化を数値と写真で共有し、次の一歩につなげます。
全身との関係は連携で解決。内科・耳鼻科・産科と情報を共有し、無理のない通院計画を組みます。

 

まとめ――出血は“注意喚起”、早めの評価が近道

出血は“失敗のサイン”ではなく、“注意喚起”です。正しく評価し、淡々とリセットを積み重ねれば、多くは落ち着きます。痛くなる前に、悪化する前に、まず現状の把握から始めましょう。必要のない処置は勧めません。必要なことを、納得のいく形で、ご一緒に進めていきます。

 

監修者

ラウレア歯科クリニック 院長 伊藤 洋平

伊藤 洋平 | Yohei Ito

明海大学歯学部卒業後、大学病院での研修を経て、複数の医療法人歯科医院にて臨床経験を積む。2017年に「ラウレア歯科矯正歯科クリニック草加」を開院。地域に密着した“予防重視”の診療を軸に、幅広い世代の患者に寄り添う歯科医療を提供している。

【略歴】

【所属学会】

【資格】

【所属スタディグループ】

【出版・執筆歴】

  • ・平成28(2016)年:デンタルダイヤモンド1月号「他医院で行われたインプラント補綴のリカバリー症例」
  • ・GO会30周年記念誌「埋伏歯をMTMを用いて挺出させた1症例」

【学会発表】

  • 平成26(2014)年:顎咬合学会ポスター発表「セファロ分析 トレースを極める」
  • 平成27(2015)年:顎咬合学会ポスター発表「治療用義歯を用いた上下顎総義歯症例」
  • 平成30(2018)年:第8回ワールドデンタルショー出展セミナー「外傷した上顎前歯部に対しMTMを用いた一症例」

【参加講習会】

  • ・UCLA「インプラント時代におけるピュア・ペリオ」
  • SBC(サージカルベーシックコース)

その他多数

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