小児歯科とは

小児歯科は、乳幼児から学童期までのお子さまを対象に、成長・発達を見据えた診療を行う診療科です。乳歯は永久歯の“道しるべ”であり、虫歯になって早期に失われると、咬合(かみ合わせ)・発音・食習慣にも影響が及びます。当院では、痛みや恐怖心への配慮を前提に、生活習慣・口腔機能の発達まで含めて長期の視点でサポートします。
当院の小児歯科の進め方

最初から治療器具を口に入れるのではなく、TSD法(Tell–Show–Do)を基本に進めます。
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Tell(説明):今日やることをやさしい言葉で説明
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Show(見せる・練習):器具や音に慣れる“練習”から
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Do(実施):できた範囲から短時間で実施、成功体験を積む
保護者さまには、診療の方針とその日のゴールを共有します。痛みが予想される際は表面麻酔→局所麻酔で負担を軽減し、処置の必要性・代替案・回数や期間の目安を事前にご説明して同意を得てから進めます。
年齢別のポイント
乳幼児(〜3歳)
生活リズムと食習慣の影響が大きい時期です。哺乳・卒乳、就寝前の飲食、仕上げみがきの体勢・当て方など、“ご家庭で今日からできること”を具体的にお伝えします。
幼児(4〜6歳)
自分みがきが始まる一方で、みがき残しが増える時期です。フッ化物応用やシーラント(奥歯の溝の予防填塞)の適応を評価し、楽しく続けられるセルフケアとご家族の仕上げみがきを併用します。
学童(7〜12歳)
乳歯と永久歯が混在し、歯列・咬合が大きく変わるタイミング。むし歯・歯肉炎の管理に加え、口呼吸・舌癖・指しゃぶり・低位舌などの機能面を点検し、必要に応じて口腔筋機能療法(MFT)を提案します。
予防の柱
- フッ化物応用:年齢・リスクに応じた濃度と頻度を提案
- シーラント:奥歯の深い溝を樹脂でコーティングし、清掃性を高める
- 食習慣:ダラダラ食べを避け、間食は時間と種類を決める
- ブラッシング:お子さまの自分みがき+保護者の仕上げみがき
- 定期管理:リスクに応じた3〜6か月のリコールで専門清掃とチェック
解説:むし歯は“脱灰(歯が溶ける)>再石灰化(回復)”の時間が長いほど進みます。フッ化物と食習慣の調整で再石灰化に傾けることが、削らない管理につながります。
口呼吸・口腔機能の問題

最近はお子さんの口呼吸の問題が増えています。
口呼吸を続けていると、お口の中が乾燥して唾液の作用が弱まり、虫歯もできやすくなります。また、細菌やウイルスに感染しやすくなる、口の周りの筋肉の発達を妨げる、歯並びに悪影響を及ぼすなど、さまざまなリスクがあります。
当院では、口腔筋機能療法によってお子さんの口呼吸を改善する治療を行っております。口呼吸が気になる場合は、お気軽にご相談ください。
小児のむし歯治療
侵襲最小の修復(MI)
小さなう窩は、拡大視野とう蝕検知液で感染歯質のみ選択的に除去し、コンポジットレジン(CR)で当日修復をめざします。歯質保存のため、窩洞形成は最小限にとどめ、ラバーダムや防湿で術野を乾燥・清潔に保ちます。処置時間はお子さまの集中力に合わせ短時間×複数回へ分割することもあります。
う蝕進行抑制(初期病変の管理)
穴が空いていない白斑〜初期う蝕は“削らない”が基本。フッ化物塗布/高濃度フッ化物歯磨剤の指導/バイオフィルム除去に加え、間食の回数・タイミングを整えて再石灰化を促します。リスクが高い部位はシーラントの適応を評価します(経時的な摩耗・脱落があるため定期チェック前提)。
痛みのコントロール(段階的アプローチ)
表面麻酔→局所麻酔で疼痛を抑え、Tell–Show–Do(TSD)で“できた”経験を積ませます。音・振動が苦手な場合は器具や手順を事前練習してから実施。痛みや不安が強い日は応急処置を優先し、計画治療は後日に回すことがあります。
乳歯の根管治療(感染源の除去と保全)
感染が歯髄に及ぶ場合、髄切・髄除(状態に応じて)→洗浄・消毒→封鎖で症状の改善と咀嚼機能を回復します。後継永久歯の萌出スペースや咬合を損なわないことが目的で、被せ物(クラウン)で強度を確保することがあります。治療回数・期間は病変の広さ・根の形態・協力度で変動します。
外傷対応(欠けた/抜けた/打撲)
転倒などで歯が欠けたら破折片を乾燥させずに保管してご来院ください。乳歯が完全に抜けた(脱落)場合は再植しません(後継永久歯に影響の恐れがあるため)。永久歯が脱落した場合は牛乳・生理食塩水などで湿潤保存し、自己接着せずに至急受診を。いずれのケースも当日〜可及的早期の診察が望ましいです。
いずれの選択肢も、年齢・協力度・病変の大きさ・全身状態により対応が変わります。各治療前に回数・期間・副作用・費用の目安を中立的にご説明します(効果の断定は行いません)。
リスク・副作用
局所麻酔後の違和感、処置後の一時的な痛み・しみ、修復物の脱離・二次う蝕、金属材料選択時の金属アレルギー、外傷後の歯髄壊死や変色、根管治療後の痛みや腫れ、再治療が必要になる可能性などが挙げられます。気になる症状が続く場合は早めにご連絡ください。
よくある質問
歯が生え始めた頃から受診可能です。最初は慣れるための通院から始めます。
年齢に応じた濃度・量・頻度を守って使用します。塗布後の注意点は当日お伝えします。
経時的にすり減り・脱落することがあるため、定期チェックが必要です。
学齢期でも奥歯・歯間部は難所です。自立度に応じて徐々に移行し、チェックは続けましょう。
学校検診はスクリーニングです。早めに受診し、治療・予防計画を立てましょう。
乾燥させず、可能なら牛乳や生理食塩水、口の中(頬と歯ぐきの間)で保管し、自己接着せずにお持ちください。早めの受診が目安です。